多様なぶどう品種
甘みだけではない風味や味わいのメカニズム

ぶどうに含まれるアミノ酸は、果実の味わいに大きな影響を与えます。例えばグリシンやアラニンは甘みを、ロイシンは苦みを、アスパラギン酸は酸味をもたらします。これらアミノ酸が複雑に組み合わされることで、ぶどうの味わいは単なる甘さだけではなく、深みと複雑さを持つようになります。また、植物の根に寄生するアーバスキュラー菌根菌がアミノ酸を吸収し植物の生育に利用することが知られています。このアミノ酸が果実の成熟過程で様々な化学反応を引き起こし、それが結果的に果実の風味や味わいに影響を与えます。

 それぞれのぶどう品種が独自の風味持つ理由の一つは、このアミノ酸の種類と量の違いによるものです。

土壌中のアミノ酸は微生物や植物の死骸など有機物が土壌微生物によって分解される過程で生成されます。更に分解が進むとアンモニア態窒素に無機化され、硝化作用によって硝酸態窒素への変化して行きます。更にバクテリアによって亜硝酸態窒素→硝酸イオン(NO3-)に変換され、毛細根から植物内に窒素成分として取り込まれます。

ぶどうの風味や味わいは、生育する環境にも大きく影響を受けます。これは「テロワール」と呼ばれ、土壌環境や気候、日照時間、湿度、動植物の生態系など地理的な要素がぶどうの品質に影響を与えるという考え方です。

特に土壌はぶどうの味わいに大きな影響を与えます。土壌に含まれるミネラル成分は、ぶどうの根から吸収され、果実の風味やアミノ酸の組成に影響を与えます。また気候はぶどうの成熟度や糖度、酸度などに影響を与え、それが結果的に風味や味わいに反映されます。

したがって、同じ品種のぶどうでも、畑のある場所やその環境によって、風味や味わいは大きく変わることがあります。これがぶどうの多様性と複雑性を生み出す要因の一つとなっています。

 それぞれのぶどうが独自の風味を持つ理由の一つは、この「テロワール」の違いによるものです。